数年来の左膝痛、「老人病」と言われたそうです
糸島こどもとおとなのクリニックからお届けするマッケンジー法・症例ファイル。今回は左膝の痛みで来院された60代女性のお話です。
2〜3年前からこれといった思い当たることもなく左膝が痛くなりました。近くの整形外科にかかったところ、膝のレントゲン写真を撮影され、軟骨がすり減っている「老人病」と言われたそうです。治らないのなら病院に行ってもしかたがないと思って、以来、治療は受けずに我慢しておられました。数日前に脚を崩した姿勢で長く座った後、左膝痛が強くなったようで、夜も痛みがあってよく眠れないため来院されました。痛みの場所は左膝の内側です。
単純X線写真では左膝内側裂隙の軽度狭小化と骨棘形成を認め、たしかに変形性膝関節症と診断できます。腰椎は変性辷り(L3/4)があります。
立ち上がる時、歩くときには左膝内側に7-8点(考えうる最大の痛みが10点満点として)があることを確認しました。
姿勢が悪いので、座位姿勢の矯正保持をしてみます。1分後、少し痛みが軽いかもと言われます。
そこで、流し台の縁に腰を当てて、伸展をしっかりと5回してみます。


(EIS流し台 5回 W)
先程はなかった、少し脚を引きずる痛さになっています。
そこで、今度は座っていただき、しっかりと屈曲方向に負荷をかけてみます。


(FISitting 5回 B?)
あと5回、しっかりと負荷をかけて屈曲してもらいます。

エクササイズのやり方などを再度確認し、初回評価を終了しました。
そして、その翌日。
エクササイズすると良くなるものの、また痛くなるようです。痛みとして昨日の痛みの4割残っている感じで、かなりしのぎやすくはなったようです。
やっておられたとおりにエクササイズをやっていただき、確認します。

(FIS 5回 decreased 歩行時痛は2点 B)
やはりエクササイズは有効なことは間違いなさそうですが、もう少ししっかりと曲げる余地がありそうで、さらに深く屈曲できるようにやりかたを少し変えて5回追加します。

(FIS 踵を持ち上げるようにしてしっかりと 5回 abolish B)
屈曲の負荷をしっかりとかけると痛みがなくなることも確認できました。




人間ですから誰にだって加齢による変化はおこります。
ご高齢の患者さんは、皆さん程度の差はあれ、内心は「歳のせいかしら……」と思いながら受診されます。
しかし、その痛みが本当に改善することのできない加齢による変性などの変化に伴うものなのかは評価してみないとわからないのです。
「老人病」という言葉。だれが作り出したのでしょうね。「歳のせいだから」という理由づけもしかり。
医療者が患者本人に対して使ってはいけない言葉だと考えています。