前屈のストレッチをしていて腰の痛みが強くなりました
福岡、糸島こどもとおとなのクリニックからお届けするマッケンジー法・症例ファイル。
今回はストレッチで腰痛が増悪したという30代男性のお話です。
デスクワークで座りっぱなしのことが多いお仕事をしておられます。
以前から時々軽い腰痛くらいはあったようですが、一ヶ月ほど前に、あまりこれといったきっかけもなく腰痛を覚え、その後、徐々に増悪してきました。
昨日はいよいよ痛くなってきたので、近くの整骨院にいって施術を受けたそうですが、あまりよくならなかったようです。
そちらで前屈などのストレッチもしたほうが良いと言われて自宅でもストレッチをやっていたところ、急に痛みが強くなり、横になって休んでいたのですが、起きようとしたら起きられないくらいに痛みが強くなりました。
その後、動いていたら少しは良いのですが、一度は整形外科にかかったほうが良いと考えて来院しました。
座っているだけで6点(考えうる最大の痛みが10点満点として)、立った状態で前屈(屈曲)すると8点の痛みがあります。
まずは座っていただき、姿勢を確認すると、少し猫背だとわかります。
そこで、姿勢を矯正して保持すること1分。




腰椎の可動域を確認すると体がもともと硬いようで、痛みが許す範囲で屈曲してみると指先から床まで40cm以上はありそうです。
これは痛く無いときと同じくらいだそうで、痛みの程度は8点だけど頑張っていると言われます。8点?と思いましたが、痛みの感じ方は人それぞれ。痛みに強いほうだそうで、曲げられる様子を見ているとそこまで痛いのかと思えてきます。
逆に伸展してみると、これは痛みは3点と軽減します。横に動かす動きでも3点程度と痛みは強くありません。
どうやら前屈(屈曲)方向だけが痛みが強くなるということがわかります。
先程、姿勢を良くすると少し痛みが軽減したことと、日常生活パターン、症状が急に悪くなったときにやっていた曲げるストレッチなどのヒントから、まずは伸展方向を選びます。
まずはうつ伏せで肘をついて少しだけ腰椎を伸ばした状態(パピー・ポジションと呼びます)になってみます。


良さそうな印象ですから両手で上半身を持ち上げてしっかりと腰をそらしてみます。
最初の数回は少しだけ腰の痛みがありましたが、繰り返しているうちに少しずつ痛くなくなるのがわかったようです。



(EIL w/sag 10回 PDMは反復とともに軽快 B)
診察の開始時点では立ったままで腰を反らすと3点ほどの痛みがありましたので、もう一度同じことをしてみます。

職場ではうつ伏せになることもできませんので、立ったままでやれる腰椎の伸展エクササイズを10回やってみます。
もはや腰痛は誘発されません。
座る姿勢と立位での伸展を宿題にして初回セッションを終了しました。
今回は整骨院で腰痛を改善すべく指導されたというストレッチをやっていて急に悪くなったというエピソードでしたが、皆さんはもうお気づきでしょうか。
よく、「腰痛に効く体操」というフレーズを耳にしますね。私自身がマッケンジー法で診療していることを知っている友人から「腰痛に効く体操を教えて!」と聞かれることもあります。しかし、腰痛と言っても様々なタイプの腰痛があります。ストレッチをすることが悪いわけではないのですが、腰痛になったときに、そのタイプを判別することなく一律に同じストレッチをすると、逆に悪くなることがあるのは当然のことなのです。
マッケンジー法ではどのようにして腰が痛くなったのかという発症のきっかけだけではなく、日頃の生活パターンも含めた詳細な問診情報を参考にして、実際に体を動かしたときの反応を見ながらその人がどのような動きをすることで症状が良くなるのかを見つけていきます。マッケンジー法は、いわば完全カスタム医療とも言える評価・治療法なのです。