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糸島こどもとおとなのクリニック

マッケンジー法・症例ファイル

case_56 急性腰痛症(ぎっくり腰・ギックリ腰)

投稿日:2017年11月13日 更新日:

急性腰痛症(ぎっくり腰)……卒業のタイミングは?

このところ上肢の症例が続いていたのに気づいて、久しぶりにマッケンジー法といえば腰痛…というところに帰って急性腰痛症の症例をご紹介します。
今回はマッケンジー法・症例ファイルでご紹介してきた動かすべき方向(DP: Directional Preference)と卒業(治療終了)のタイミングにスポットをあててみました。

70代の女性ですが、大変アクティビティが高く、趣味で太極拳、ダーツ、グランドゴルフなどをなさいます。家庭菜園もあり、日頃から草取りもなさっています。

さて、昨日は通常よりやや長い3時間ほど草取りをしたそうです。その時はなんともなかったようですが、入浴後に腰痛を覚え、今朝腰痛が増悪していたため来院されました。

立ち上がりや前かがみなどで腰の左側に痛みがでます。立位や動いているときのほうが少し良いようです。

単純X線検査では年齢相応の変性所見はありますが、メカニカルな評価が禁忌となるような重篤な所見はありません。問診情報もレッドフラグなしです。

座位姿勢は一般的な同年代の方より良いです。この状態での左腰の痛みはVAS 5/10とのこと。

さらに姿勢矯正保持を行ったところ、明らかに痛みが増えるようです。
(姿勢矯正保持 worse)

立っていただき、痛みの具合を伺うと、わずかに良くてVAS 4/10。

腰椎の可動域をみると、通常の腰が痛くないときには屈曲(前かがみ)すると手が床につくくらいとのことですが、今は重度に制限されていて痛みはVAS 5/10に増えます。もとに戻ると痛みは元のレベルに戻ります。
(屈曲 increase VAS 4/10→5/10 NW)

伸展(腰をそらす)では疼痛は改善する感じがありますが、もとに戻ると痛みは元のレベルに戻ります。
(伸展 decrease 4/10→3/10 NB)

見た目は特に側方への傾きはありませんが、側方に動かしてみると、右側方すべりでは痛みがはっきりと軽減し、左側方すべりではわずかに痛みが増悪しますが、いずれももとに戻ると痛みは元のレベルに戻ります。
(シフトなし、RSGIS decrease 1-2/10 NB、LSGIS increase 5/10 NW)

ここまでどの方向に動かしても「もとに戻ると痛みは元のレベルに戻る」でしたね。さて、どの方向から動かしてみるのが正解でしょうか?
実はこの時点では「なんとも言えない」のです。どの方向も更に繰り返し、また負荷を変えて試してみる必要があります。

姿勢矯正保持でやや悪い感じがあり、右側方すべりで症状の軽快感がありましたね。それを参考にして壁を使って体を支えて腰を横に動かす負荷を繰り返してみることにします。

評価の開始前には必ずその時点でのベースラインを確認します。立位でのVAS 5/10の左腰痛があることを確認しました。

同じ動きを10回繰り返していただくと、左の腰痛は半減した感じがあるようで、しっかりと腰を横に押し込んだ状態でそのまま伸展をしていただくと今度は痛みが増えることなくかなり反ることができるようで、これを3回してもらい、再びまっすぐ立っていただくと、痛みは半減したままで保てています(^-^)
(反復RSGIS w/op self 10回+EIS 3回 2-3/10 better)

もう一度、しっかりと同じ動きをしていただくと、さらに痛みは改善します。
(反復RSGIS w/op self 10回+EIS 3回 1-2/10 better)

歩いていただくと明らかに軽快感があり、椅子からの立ち上がりがかなり楽になったと、ご本人としてはすでにかなり満足されているようです(^-^)

A子さん
明日、太極拳があるのですが、行っていいですか?
佛坂
どうしたいです?
A子さん
やめておいたほうが良いでしょうか
佛坂
私だったら行きたいんだったら行くと思いますよ。それでもしまた腰痛が悪くなったらどうしたらいいと思いますか?
A子さん
(腰を横に曲げる動作をしながら)さっきの体操ですか?
佛坂
そうです!もちろん休みたいならそれでもいいんですが、もし太極拳をやっていて腰痛が強くなってもそれさえ知っていれば怖くないですよね!

そして翌日。

痛みの程度は3/10止まりのようです。

確認のためしっかりと側方の動きをやってみますが、これ以上の改善はありません。

そこで、今度は側方の動きをやめてまっすぐに伸展のみをやってみます。

流し台で腰を支えていただきながら伸展すること5回、徐々に痛みが軽くなる感じがあるようですが、まだはっきりしません。

今度はうつ伏せでの伸展5回、問題ないようですのでさらに負荷を上げて5回、疼痛は2/10と僅かに下がったかなというレベルですが、歩行は明らかに改善しています。
(EIL 5回、w/sag 5回 VAS 2/10 better)

実はその人に適切な動かすべき方向が変化することは稀ではありません。このように毎回の症状の変化を確認しつつ、そのままで良いのか、負荷の強さを変える、種類を変える、あるいは方向を変えるべきなのかと微調整が続きます。

数日後のフォローアップではエンドレンジを攻めるために腰にタオルを当てたり工夫することなどの指導を追加し、初診より7日目。

ニコニコ顔でおいでになりました(^-^)
……が、痛みは?とお伺いすると2/10くらいはあるかもとおっしゃいます(^_^;)

実はもともと腰痛持ちで時にその程度の痛みはよくあることだったので現在は気にならないとおっしゃいます。
卒業する気満満でおられるのが見て取れますので、今後も草取りなどの合間など、できるときには覚えたエクササイズをなさることをおすすめし治療終了しました。

あれっ、完治ではないのに終わっていいの?…と思われますよねw

問題ありません。痛みを完治させるのをご本人がお望みなら目指す必要があるかもしれませんね。でも、ご本人が「もう大丈夫」と自信を持っておられる時に、それ以上の改善を押し付けるのはある意味、医療者の一方的なおごりとも思えます。

マッケンジー法では患者さんの自立が最も重要と考えています。

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